挨拶にかえて
神聖なる信仰の場である寺社仏閣、教会等を事業承継の対象にすることについて一定の批判があることは、私どもも承知しております。しかし、後継者がいないという理由で、生まれ育ったお寺を追い出されてしまったご住職や、檀家が少なく、収入がほとんどない零細寺院のご高齢の住職に対し、「寺の収入をあてにするのは間違っている。住職の務めで生活できないのならアルバイトでもしたらいい」と言われ、ご住職をお寺から追い出そうとする檀家さんもいらっしゃいました。また、経営難に陥ってしまい、拠り所としていた菩提寺を失ってしまった檀家の方々も見てまいりました。
現代の寺院等は世襲により世代交代が為されることが多く、望まずしてお寺や神社の後継者となることも少なくありません。そして、親の跡を継いでみるものの、やはりうまくいかないケースもあります。
そういった方々が、別の道を選ぶ自由は当然にして保障されるべきだと思いますし、その境内建物は彼らの生家であることが多く、宗教法人の後継者の地位とともにその土地建物を譲り渡す事は批判されるべきものでしょうか。街の飲食店や雑貨屋などが後継者がなく廃業するのを寂しく思うのと同様、数百年とその地に存在していたお寺や神社がなくなっていくのもまた、寂しく思うものです。
お寺バンク 代表 沢井 礼一郎